『東京ラブストーリー』(1991年)は鈴木保奈美が主演を務めたフジテレビの月9ドラマである。相手役はまだ知名度が高くなかった頃の織田裕二。「誰だ、この俳優は?」と初めて見た時に感じた記憶がある。ドラマの内容は忘れたが、主題歌だけは強烈な存在感を放ち続けている。小田和正による『ラブ・ストーリーは突然に』だ。
月曜の夜9時は街からOLが消える、凄い表現でドラマは語られた
月9ドラマの人気ランキングを作れば、『東京ラブストーリー』はベスト10に入る一本であろう。社会現象を巻き起こし、当時のドラマファンを虜にした。
「月曜の夜9時は街からOLが消える」。
いまではコンプライアンス的に問題がある表現だが、それほど多くの人がテレビの前に集まっていた(当時はリアルタイム視聴が普通)。男女問わず、食い入るように見ていたドラマであった。ところが、冒頭で触れたように内容をほとんど覚えていない。覚えているのはただ一つ、あの主題歌を耳にした時の感覚なのだ。
小田和正はオフコースの中心メンバー、『さよなら』が有名
いまの若い人たちは小田和正を知らないだろう。そこで、少し補足しておきたい。小田和正はオフコースというバンドの中心メンバーである。今回調べてわかったが、1989年に解散していた。小田和正は作曲を手掛け、その声は男にしては珍しいほどの高音域を持ち、繊細でどこか儚い響きがあった。オフコースは1979年に『さよなら』が大ヒットし、卒業式では生徒が歌ったりしていた。たまにYouTubeでオフコースを聴くことがあるが、本当に好きだった曲は『Yes-No』(1980年)だったことにいま頃気が付いた。若い時は新しい音楽を追い求めていたが、この曲を繰り返し聴いてしまう自分がいる。年をとったということなのだろうか。そんな小田和正がテレビドラマの主題歌を歌うことは意外だった。オフコースはテレビ出演が少ないバンドとして知られ、商業シーンとは一定の距離をおいていたからだ。
電車の中吊り広告を見て、脳内に主題歌が駆け巡った
さて、話題を元に戻そう。『東京ラブストーリー』が放送される前、電車内に中吊り広告がぶら下がっていた。そこには小田和正が踵を上げ、やや体をそらせる姿が写っていた。夕陽が差し込み、柔らかな光が広告を照らしていた光景はいまでも忘れられない。脳内で『ラブ・ストーリーは突然に』が流れ、胸の奥がざわつき、これから凄いドラマが始まりそうだという予感が全身を駆け巡っていた。
『東京ラブストーリー』は小田和正の名曲に出会えた思い出深いドラマ
世間では『東京ラブストーリー』といえば、鈴木保奈美の魅力や織田裕二のブレイクを語ることが多い。それも間違いなくこのドラマの重要な要素である。しかし、僕にとってこの作品の価値は別のところにある。それは小田和正が12年ぶりに帰ってきたということ(あくまで僕にとって)。オフコースの『さよなら』が流行していた頃はまだ子供。90年代に入り、大人になった僕の前に進化した小田和正が現れた。『東京ラブストーリー』は鈴木保奈美でも織田裕二でもない。小田和正の名曲に出会えた思い出深いドラマなのである。
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