『この恋あたためますか』の主題歌は、不安な時代に寄り添ってくれた

長い間ドラマを見てきたが、あの年は特別だった。『この恋あたためますか』(2020年)はその頃に好きになったドラマの一つ。SEKAI NO OWARI(以下、セカオワ)による主題歌『silent』は心へ染み込んできた。

コロナ禍の2020年はドラマを純粋に楽しめる精神状態ではなかった

2020年は新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、先の見えない不安が日常を覆っていた。プライベートでは一生忘れることがない不幸に直面した。そんな中で迎えた秋クール。通常であればクリスマスをピークにしたドラマが放送され、街の空気も浮き足立つ時期だ。しかし、僕はもともとクリスマスが苦手。「クリスマスだから」という理由で特別なことをする空気が性に合わない。そこへコロナ禍の不安が重なり、ドラマを純粋に楽しめる精神状態ではなかった。

キャッチコピーがやさしい、主要キャストの名だけはワクワクさせた

いま、あらためて『この恋あたためますか』のキャッチコピーを見ると、胸に響いてくるものがある。

「今年はいろんなことがありました。甘いものは、人を幸せにします。」

その通り。当時、これを目にした印象は覚えていないが、あの年を経たいまだからからこそ、より深くやさしさが伝わってくる。そもそも、ドラマそのものに大きな期待は抱いていなかった。ただ、主要キャストにはワクワクしていた。ようやく主演クラスにのぼりつめてきた中村倫也、勢いを感じていた仲野太賀と石橋静河。そして、主演の森七菜だ。才能を見抜くことに関して定評がある監督たちが起用してきた彼女。きっと何かがあるのだろうと想像していた。

セカオワの『silent』が流れる度に感情は揺さぶられた

迎えた初回、登場時の森七菜はやや子供っぽくて想像とは違っていた。しかし、次第に様々な表情を見せて魅了。とにかくピカピカだった。そしてラスト付近、セカオワの『silent』が流れて、じわっと胸が温かくなった。その後も『silent』が流れるたびに感情は揺さぶられ、最終回まで続いていった。

先に放送されたドラマの主題歌『umbrella』は後から好きになった

このドラマを見るまで、セカオワに強い関心はなかった。しかし、『silent』を知り、ミュージックビデオを見たことがきっかけで他の曲も聴いてみようと思った。そこで出会ったのが『umbrella』だった。これもいい。『竜の道 二つの顔の復讐者』(2020年)の主題歌。先に見ていたドラマなのにまったく印象に残っていない。僕の中で作品と音楽が結びついていなかったからだろうか。

秋の気配が漂い始めると『silent』のメロディが頭の中に流れてくる

話を『silent』に戻そう。好きな理由はドラマの世界観とリンクした切ないメロディだ。そして、普段はあまり気にしない歌詞。クリスマスに対して距離を感じていた自分の感覚と重なっていて惹かれた。一時期は酒を飲んだ後に何度も何度もミュージックビデオを流していた。見るというより聴くために。聴きすぎて飽きてしまうのが嫌で意識的にセーブする。その繰り返しだった。毎年、秋の気配が漂い始めると、ふと『silent』のメロディが頭の中に流れてくる。2020年という特別な時代の不安な感情を思い起こさせる一曲。静かに寄り添ってくれた音楽としてしっかりと胸に刻まれている。

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けんぞう

ドラマと音楽が大好きなおやじ。放送当時のことを思い出し、ゆるーく楽しみながらドラマで使われた音楽について綴っていく。

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