2000年代前半、柴咲コウの活躍は際立っていた。女優として頭角をあらわしながら、同時に歌手としても確かな存在感を示す。その両輪が高い次元で噛み合っていた。歌の中で強く印象に残っているのは、ドラマ『白夜行』(2006年)の主題歌『影』であった。
柴咲コウが歌う『月のしずく』では声の美しさに驚かされた
柴咲コウは映画『バトル・ロワイヤル』(2000年)で存在感を示し、『GO』(2001年)ではヒロインを務めて強烈な印象を残した。特に好きな女優というわけではなかったが、いい女優が出てきたという感覚はあった。その勢いは止まらず、草彅剛と竹内結子が共演した映画『黄泉がえり』(2003年)に出演。役名であるRUI名義で歌った主題歌『月のしずく』は楽曲の完成度が高く、何よりも声の美しさに驚かされた。女優が主題歌を担当するという枠を軽々と越えていた。
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柴咲コウは『世界の中心で、愛をさけぶ』と『白夜行』で主題歌を担当
そして、次は『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)である。柴咲コウは映画版に出演し、ドラマ版では主題歌『かたちあるもの』を歌った。この曲もいい。しかし、この後に歌う曲はもっとよかった。『白夜行』の主題歌『影』である。『世界の中心で、愛をさけぶ』は綾瀬はるかを国民的スターへと押し上げた作品であり、共演の山田孝之もまた一気に評価を高めた。『白夜行』はその二人が再びタッグを組み、さらに柴咲コウが引き続き主題歌を担当。始まる前から成功が約束されたプロジェクトに思えるが、『白夜行』は単なる話題作ではなかった。物語は徹底的に暗く、救いがないほど悲しい世界観を持っていた。
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『影』は重苦しい物語と同化、雪穂に対する亮司の感情を思い出させる
主題歌『影』はその重苦しい物語と完全に同化していた。『世界の中心で、愛をさけぶ』に引き続き、原作を読んでインスピレーションを得た柴咲コウが作詞を担当しているのだから驚き。まさにあふれるばかりの才能である。酔った勢いでYouTubeでミュージックビデオを再生することがあるが、いまでも柴咲コウの楽曲で聴くのは『影』ばかり。『白夜行』は放送をDVDに保存しているほど好きだが、もう一度見たいかと聞かれると躊躇してしまう。あの世界観に再び踏み込むには、相応の覚悟が必要だからだ。だからこそ、『影』を聴くことで思い出しているのかもしれない。雪穂(綾瀬はるか)の影となり、彼女を守り続けた亮司(山田孝之)の感情を…。
柴咲コウはイメージを固定されない姿勢を貫く特別な表現者といえる
柴咲コウは直近ではABEMAのドラマ『スキャンダルイブ』(2025年)で主演と主題歌を兼任した。時代に合わせて表現の形を変えながら、ひとつのイメージに固定されない姿勢を貫いている。その柔軟さは2000年前半から変わっていない。女優と歌手の両面で時代をとらえる柴咲コウはやはり特別な表現者といえるであろう。

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